飯南町志津見 2021.9.4 カメムシ目セミ科
鳴き声は聞こえるけれど、なかなか姿は見せてくれないツクツクボウシ。
夏の終わりに鳴き始め、秋が近いことを知らせてくれる。
季節が移り変わるもの悲しさを、音によって記憶に深く刻み込むことができる稀な存在。
そんな情緒を感じさせるこのセミは、俳句の季語でもある。
法師蝉煮炊といふも二人きり
(ほうしぜみ にたきといふも ふたりきり)
富安風生 (とみやす ふうせい)
ツクツクボウシが鳴いている。
煮炊きをするとはいっても、今では二人分だけだ。
夏が去り秋が訪れるさみしさに、子どもが独り立ちし夫婦二人だけになったさみしさを重ねている。
そこにツクツクボウシの鳴き声が聞こえてくる。
聞いただけで感情の静かな揺れを促す。
ツクツクボウシはそんな役割を持つセミだ。